東京家庭裁判所 昭和43年(家)7373号 審判 1968年9月12日
申立人 清水美樹(仮名) 外一名
主文
申立人らの氏「清水」を「ジョンソン」に変更することを許可する。
理由
一、申立人らは主文同旨の審判を求めその理由として述べるところの要旨は申立人らは以前から父島において生活しており、昭和一九年に本島に引揚げを命ぜられたが、昭和二二年一〇月に父島に帰島を許され、申立人清水美樹は現在父島において、米軍関係の仕事に従事している者である。申立人らが「清水」の氏を使用していたのは今次大戦中の暫くの間だけ「清水」の氏を使用していたのみで、これも、戦時中に当局から命ぜられて止むなく改氏したのであつて、申立人らは日常生活の全てにおいて清水の氏を称してきたこと、また、申立人夫婦間において出生した子供たちの全部がその日常生活において「ジョンソン」の氏を使用しており、戸籍面上は「清水」であるので不便を感じているのでこの際正式に「ジョンソン」姓に改氏したく本申立におよんだというのである。
二、よつて審按するに、本件記録中の資料によれば、申立人らは欧米人を祖先にもつ小笠原島民であつて、戦時中の一時期を除いて父島に居住しているものであるが、戸籍上の氏を称したのは右の戦時中の一時期に過ぎず、従来から日常生活においては「ジョンソン」の氏を称してり、申立人一家の名は、米軍政府作成の父島住民名簿にも「ジョンソン」JOHNSONとして記載されていることが認められ、また申立人ら本人の供述書によると、申立人らの長女はアメリカ合衆国人と結婚し、二男二女三男はいずれもグアム島の学校に、三女はアメリカ合衆国本土の学校に入学しているため、申立人らは、小笠原島の日本復帰後も日本の生活様式よりもむしろアメリカと深い関係をもつて生活しなければならず、そのためには戸籍上の氏が清水であることにより多大の不便を感じていることが認められる。
右の事情を綜合すると、戸籍法一〇七条の規定する氏変更の「やむを得ない事由」に該当するものと判断される。
三、よつて本件申立はこれを相当として認容し、主文のとおり審判する。
(家事審判官 野田愛子)